アクリル絵具で絵を描くことに慣れてから油絵具を使ってみる

美術館で巨匠の描いた油絵の作品を見て、自分も油絵を描いてみたいと思った人は多いと思います。私もさまざまな画家の作品を見て同じように油絵を描くことにあこがれてきました。しかし、いざ油絵具を使用してみると油絵具には独自の問題点があり、そのことが原因で絵を描く自体をやめてしまった人もいると思います。

そこでこれから絵を描きはじめたいと考えている人にはアクリル絵具で絵を描くことに慣れてから、油絵具にチャレンジすることをおススメします。下記に油絵の問題点とアクリル絵具の利点についてまとめてみました。

油絵具の問題点

油のにおい

油絵具の問題点はにおいです。油絵具は顔料(色)に油を混ぜることにより、色をキャンバスに接着させます。この時に使用した油のにおいが強いので作業場所、もしくは絵の保管する部屋が確保できないと油絵具を継続して使うことが難しいです。

ちなみにアメリカではガレージを作業場と保管場所にしている人が多いのですが、残念ながらアメリカのガレージのように作業できる部屋がないのでどの部屋を作業場にするか悩んでしまいます。使ってない部屋があるからと言って仏間を使用するわけにもいかないでしょうし・・・日本画ならありかも?(笑)。

引火性

油を使うので発火の危険性があります。油絵具は油が酸化する作用で固まります。条件によっては熱を持ち発火することもあるようです。なので油や作品の保管、油を拭いた布などの適切な管理が必要です。

有害性

これも油のにおいに関係することですが、テレピン油には有害性があり、気化した蒸気を吸うと頭痛や目眩などを引き起こす可能性があります。制作中や油絵の保管時にも部屋の換気が必要です。子供やペットと一緒に住んでいる場合はあまり好ましくないかもしれません。

もし油絵制作のための作業スペースが確保でき、油絵具を使うことを決心した人は東京芸術大学 佐藤一郎教授+油画技法材料研究室編による専門書『絵画制作入門―描く人のための理論と実践』を読まれることをおススメします。特に78ページから83ページまで読まれると有害性や有毒性について理解できます。危険なケースについても書かれているので読んでおいた方がいいでしょう。

絵画制作入門―描く人のための理論と実践

水溶性の油絵具という選択もある

アクリル絵具と油絵具では仕上がった質感が違います。なので油絵具の表現にこだわりたい人は『水溶性の油絵具』を使う方法もあります。油絵具を水で溶けるので安心です。通常の油絵具は水で溶けませんので『水溶性油絵具』と書いてある絵具を購入してください。

アクリル絵具の利点

安全

油を使わないで、水でアクリル絵具を薄めるので安全です。においの問題もありませんし、引火する問題もありません。ただし油絵具もアクリル絵具も毒性のある顔料があるので食べたり、傷口につけたりしてはいけません。よって制作中の飲食などはひかえた方がいいでしょう。

水彩絵具のようにも表現できる

薄める水の量を多くすることで水彩絵具のようにも表現できるし、少なくすることで油絵具のようにも表現できます。多彩な表現にチャレンジできるので、絵の学習に大変役に立ちます。

乾燥が早い

アクリル絵具は水分が蒸発することで固まります。なので油絵具に比べて乾燥するのが早く、次の作業がしやすいです。仕事が忙しく、週末のみしか絵の制作時間がとれないような人には便利でしょう。

まとめ

最初はアクリル絵具を使ってみる

これから絵を描きたいと考えている人におススメするのはアクリル絵具です。日本の住宅事情を考えると油絵を描けるような作業スペースを確保できる人は少ないと思います。もちろん上記にあげた水溶性の油絵具を使えば問題ありませんが、水彩絵の具のようにも使えるアクリル絵具を使用したほうが初めて絵を描く人にとっては使いやすいと思います。

絵を描くことに慣れたら油絵具も使ってみる

油絵具は絵を描くことが習慣として身に付いてから使用しても遅くはないので、まずは挫折しにくいアクリル絵具で絵を描くことを楽しんだ方がいいでしょう。私としては最終的にアクリル絵具と油絵具の両方を使ってみることをおすすめします。アクリル絵具では表現が難しかったことが油絵具で簡単にできてしまうこともありますし、質感が違うので絵を描く楽しみ方も変わると思います。

『油絵入門 ビギナーズ・ノート』を読む

監修/小木曽 誠さんの油絵入門ビギナーズ・ノートを読みました。油絵のことが全く知らない人がよんでも、簡単に理解し、油絵に挑戦できる書籍だと思いました。簡単に読むことができますが、各ステップを実践しようとすると内容が濃いので、長い時間かけて絵を描くことが楽しめる書籍になっていると思います。

油絵入門ビギナーズ・ノート

Step1
画材の紹介が簡素に解説されています。絵具に毒性があること、ブラシの使い方と手入れの仕方、メディウム(画溶液、溶き油)など基本的なことが書かれています。また絵具メーカーの解説も書かれているので、これから絵具を購入する人には役に立つ情報だと思います。この本の最後のページにも絵具、筆、テンペラ絵具、キャンバスの作り方などが書かれているので最初に目を通してみるといいでしょう。

これから油絵をはじめるひとにとってメディウム(画溶液、溶き油)の選択は頭を悩ませるところですが、この書籍ではテレピン油、スペシャルペンチングオイルを使用して油絵の描き方を解説していくので、まずはこの2種類をそろえるだけでOKです。画材についてもっと知りたい人は絵画制作入門―描く人のための理論と実践を読むことをおススメします。専門的な書籍ですが読みやすいし、辞書のようにもつかえるので、持っていると便利だと思います。

Step2
リンゴ、バナナ、かぼちゃ、ティーポットなどをモチーフとして、基本的な油絵の描き方を学習します。絵を描くステップに合わせて、その時に使う溶き油の種類と配合の仕方がイラストで説明されているのでわかりやすいです。またカマイユ、グリザイユ、プリマ描きなどのような専門用語も学びながら、テクニックも学べます。一度描いたモチーフを背景色で塗りつぶし、再度モチーフを描き直す方法はこの後のステップでも出てくるので、重要なテクニックになります。初めて絵を描きはじめた人にとっては「一度描いた絵を塗りつぶしてしまうなんて、もったいない・・・」と感じるでしょうけど、大胆に挑戦してみてください。

Step3
オウムガイ、ビン、野菜とかごなどのモチーフとして、透明・不透明の使い分け、ナイフによる厚塗り、ぼかし方を学習します。ナイフの使い方とぼかしの仕方については理解しやすい項目だと思います。ナイフの塗り重ねについての注意点とホワイトの使い分けが理解できればこのステップは問題ないでしょう。透明・不透明については顔料によって特性が違うので、使いながら感覚的に学べばいいと思います。もちろん受験勉強みたいに丸暗記すればマスターできることかもしれませんが・・・趣味なんだからそんなに思いつめて勉強しなくてもいいと思いますwww。

Step4
ガラスのボトル、ハッサク、花などをモチーフとして構図の決め方とドリッピングの仕方を学習します。構図の決め方については丁寧に解説が書いてありますが、絵を描いていく上で常に考えていかなくてはならないことなので、気長に学習していくつもりで挑戦するといいでしょう。ドリッピングは今まで学習してきたテクニックとは全く違う表現ができます。ブラシで描くことに慣れてきた頃だと思うので、気分転換にいい課題だと思います。

Step5
人形、かごと流木などをモチーフに材質の質感とモチーフ全体の空間について学習します。丁寧にポイントが解説されていますが、初心者である私のようなレベルの者がそう簡単にマスターできることではなさそうです。ここまでくるとこの書籍で学ぶというより、今後の宿題として課題を出されたような感じですwww。ここまで実践すれば自分で試行錯誤しながら油絵制作にとりくむことができると思います。

Step6
小木曽誠さんの作成過程を解説しています。今まで学んだ様々なテクニックがどのように活用されているのか再確認できます。このようなすごい写実画が描けるようになるわけではありませんが、この章は見て楽しめればいいと思います。写実に興味がある人は小木曽誠さんのWebサイトに行くと他にもさまざまな作品が見ることができるので、もっと楽しめると思います。またホキ美術館の収蔵作家一覧にも名前が載っているので、作品が公開されていれば見ることができるかもしれませんね。

昭和61年放送のNHK趣味講座:油絵入門 講師:小松崎邦雄

アメリカのブックオフでNHK趣味講座 油絵入門のテキストを発見しました。お値段はたったの1ドル。本の保存状態が良いので近年放送された番組かと思ったら、なんと昭和61年に放送されたテキスト。昭和61年というと1986年・・・27年前に出版されたテキストとは驚きました。どのようにしてアメリカのブックオフに流れ着いたのか考えると不思議です。

薄いテキストなのでテレビ放送の内容が全て書いてあるわけではないと思うのですが、スタンダードな油絵の使い方が少しでも理解できればと思いこのテキストを迷うことなく購入しました。なにせ価格1ドルの古本ですからね。

テキストを読んだ私の感想とメモ

2章:油絵の具と油(この章の最初の2ページ以外は画家の坂本一道さんが解説)

このテキストのなかで一番勉強になったのがこの章です。色の種類、特徴と使い方、混色上の注意、溶き油の種類と特徴などが書かれています。これから油絵を初める人への重要な注意点も書かれていました。 絵具には毒性を持っているものがあるので傷のある手で触れたり、粉末状で吸い込んだり、口に入れてはいけないと記述。

私の日本でのカルチャースクール経験とコミニティーカレッジでの経験から絵具に毒性があることを知らないビギナーが多くいました。例えば筆をくわえてしゃぶったり、パレット代わりに使っている小皿でご飯を食べたりする人を見かけたことがあります。上記のような変な習慣は止めた方がいいと思います。

3章:用具をそろえる

絵具箱、イーゼル、パレット、油壺、筆、ナイフ、筆洗のバケツ、いす、腕枕、クリップなどについて説明されていました。人によって必要な物は違うと思うのでこれからはじめる人は徐々に揃えていけばいいと思います。私の場合は絵具箱はDIY用の大きめの工具入れ、イーゼルは持ってないし、パレットはブッチャー用のパレットを使っています。

特に役に立ちそうな情報だったのが、筆洗のバケツを3つ用意して次々にバケツを変えて洗うと筆が石鹸で洗う必要が無いくらいにきれいに落ちるとのこと。これなら自宅でも楽に筆洗いができそうです。しかし問題は筆洗のバケツの値段が1つ50ドルすること。5ドルくらいのモノもあるのですがフタに汚れが付着すると閉まらなくなってしまいます。後日ちゃんとした筆洗いのバケツを追加購入してためしてみようと思います。

4章:形をつかむ

このテキストは油絵がメインなので形については深く追求していません。この章を超簡単にまとめてしまうと石膏デッサンで長い時間をかけて何度も見え方を確かめる訓練をして形と明暗の訓練をするのがいいとのこと。気軽に絵を描きはじめたい初心者としては耳が痛いところですね。しかし、すぐに実行できそうなことも書いてありました。形を正しくつかむためには常に正しい姿勢で描かないと垂直線と水平線が正しく認識できないし、描くことができないと書かれていました。単純な情報だけど習慣として身体にみについているかと言うと難しい。自分の作業中の姿勢の悪さを思い出して反省、これからは姿勢に注意したいと思います。

5章:色で描く

この章もメインの話ではないので深くは追求はしていません。印象派の作品を例にして色彩を重要視して描く方法があることを解説しています。

6章から25章:作例

静物、人物、風景などの様々な作品を作りながら油絵の使い方を解説しています。たぶん放送では講師が色をまぜるところや、油を使う映像が入ることにより、油絵の使い方が理解されやすく構成されていたのかもしれません。しかし書籍にしてしまうと油絵の使い方の解説は少なく、静物、人物、風景などを描く時の個別のアドバイスのようになっているのが残念です。その代わりに様々な絵の制作プロセスが書かれているでスタンダードな制作プロセスが理解できると思います。また様々な絵画の名作と共に各章の作例を解説しているので読み物としてもは面白いです。

最終章:油絵の歴史

この章は高階秀爾さんによる油絵の誕生、イタリアでの展開、バロックとロココ、近代絵画、印象派以降、日本の油絵について解説されています。この内容は放送してないのでテキスト購入者へのサービスでしょうか?楽しく読ませてもらいました。

感想

NHK趣味講座のテキストなので雑誌のように薄い本なのですが、情報量が豊富に掲載されています。特に材料に関する記述や基礎的な描き方などはよく解説されているので、通常書店で売っているような油絵の本よりよく書けているかもしれません。かなり勉強になったのでこのテキストには十分に満足しています。

ただし、少し気になる点としては学習のスピードが速いです。昭和61年放送を見ていないので確実なことは言えませんが、1週間ごとに描く題材が変わってしまうので、視聴者が自分の手を動かしながら学習するには難しいないようになっています。なので当時この番組を見て油絵をはじめようと思った人は6章の放送あたりから取り残されてしまった可能性があります?これだけいいテキストなのだからもう少しペースを落としてもよかった気がします。

もちろん昭和61年という時代では、油絵の情報を入手できるだけで十分価値ある放送だったと思われます。なので情報量を優先する必要があったのかもしれません。テレビや書籍のように情報量の提供に限界があるメディアでは、「情報量を優先してテキストをつくるのか?」それとも「初心者が実行可能なレベルで情報を抑えるのか?」で制作側は悩まれたと思います。

最近のNHK趣味講座

NHKでは適期的に油絵入門の入門講座を放送しているようで、その後も様々な講師によって放送され続けています。最近では『趣味Do楽 城戸真亜子の油絵って楽しい!』 という番組が放送されていたようです。

テキストのサンプルを見ると初心者が手を動かして学習しやすいテキストになっているようです。目次を確認すると27年前よりもトピックの数がしぼられ、制作しやすい内容になっているようです。この講座ならば、まったく絵を描いたことがない人でも楽しんでやりとげられたのではないでしょうか?