昭和61年放送のNHK趣味講座:油絵入門 講師:小松崎邦雄

アメリカのブックオフでNHK趣味講座 油絵入門のテキストを発見しました。お値段はたったの1ドル。本の保存状態が良いので近年放送された番組かと思ったら、なんと昭和61年に放送されたテキスト。昭和61年というと1986年・・・27年前に出版されたテキストとは驚きました。どのようにしてアメリカのブックオフに流れ着いたのか考えると不思議です。

薄いテキストなのでテレビ放送の内容が全て書いてあるわけではないと思うのですが、スタンダードな油絵の使い方が少しでも理解できればと思いこのテキストを迷うことなく購入しました。なにせ価格1ドルの古本ですからね。

テキストを読んだ私の感想とメモ

2章:油絵の具と油(この章の最初の2ページ以外は画家の坂本一道さんが解説)

このテキストのなかで一番勉強になったのがこの章です。色の種類、特徴と使い方、混色上の注意、溶き油の種類と特徴などが書かれています。これから油絵を初める人への重要な注意点も書かれていました。 絵具には毒性を持っているものがあるので傷のある手で触れたり、粉末状で吸い込んだり、口に入れてはいけないと記述。

私の日本でのカルチャースクール経験とコミニティーカレッジでの経験から絵具に毒性があることを知らないビギナーが多くいました。例えば筆をくわえてしゃぶったり、パレット代わりに使っている小皿でご飯を食べたりする人を見かけたことがあります。上記のような変な習慣は止めた方がいいと思います。

3章:用具をそろえる

絵具箱、イーゼル、パレット、油壺、筆、ナイフ、筆洗のバケツ、いす、腕枕、クリップなどについて説明されていました。人によって必要な物は違うと思うのでこれからはじめる人は徐々に揃えていけばいいと思います。私の場合は絵具箱はDIY用の大きめの工具入れ、イーゼルは持ってないし、パレットはブッチャー用のパレットを使っています。

特に役に立ちそうな情報だったのが、筆洗のバケツを3つ用意して次々にバケツを変えて洗うと筆が石鹸で洗う必要が無いくらいにきれいに落ちるとのこと。これなら自宅でも楽に筆洗いができそうです。しかし問題は筆洗のバケツの値段が1つ50ドルすること。5ドルくらいのモノもあるのですがフタに汚れが付着すると閉まらなくなってしまいます。後日ちゃんとした筆洗いのバケツを追加購入してためしてみようと思います。

4章:形をつかむ

このテキストは油絵がメインなので形については深く追求していません。この章を超簡単にまとめてしまうと石膏デッサンで長い時間をかけて何度も見え方を確かめる訓練をして形と明暗の訓練をするのがいいとのこと。気軽に絵を描きはじめたい初心者としては耳が痛いところですね。しかし、すぐに実行できそうなことも書いてありました。形を正しくつかむためには常に正しい姿勢で描かないと垂直線と水平線が正しく認識できないし、描くことができないと書かれていました。単純な情報だけど習慣として身体にみについているかと言うと難しい。自分の作業中の姿勢の悪さを思い出して反省、これからは姿勢に注意したいと思います。

5章:色で描く

この章もメインの話ではないので深くは追求はしていません。印象派の作品を例にして色彩を重要視して描く方法があることを解説しています。

6章から25章:作例

静物、人物、風景などの様々な作品を作りながら油絵の使い方を解説しています。たぶん放送では講師が色をまぜるところや、油を使う映像が入ることにより、油絵の使い方が理解されやすく構成されていたのかもしれません。しかし書籍にしてしまうと油絵の使い方の解説は少なく、静物、人物、風景などを描く時の個別のアドバイスのようになっているのが残念です。その代わりに様々な絵の制作プロセスが書かれているでスタンダードな制作プロセスが理解できると思います。また様々な絵画の名作と共に各章の作例を解説しているので読み物としてもは面白いです。

最終章:油絵の歴史

この章は高階秀爾さんによる油絵の誕生、イタリアでの展開、バロックとロココ、近代絵画、印象派以降、日本の油絵について解説されています。この内容は放送してないのでテキスト購入者へのサービスでしょうか?楽しく読ませてもらいました。

感想

NHK趣味講座のテキストなので雑誌のように薄い本なのですが、情報量が豊富に掲載されています。特に材料に関する記述や基礎的な描き方などはよく解説されているので、通常書店で売っているような油絵の本よりよく書けているかもしれません。かなり勉強になったのでこのテキストには十分に満足しています。

ただし、少し気になる点としては学習のスピードが速いです。昭和61年放送を見ていないので確実なことは言えませんが、1週間ごとに描く題材が変わってしまうので、視聴者が自分の手を動かしながら学習するには難しいないようになっています。なので当時この番組を見て油絵をはじめようと思った人は6章の放送あたりから取り残されてしまった可能性があります?これだけいいテキストなのだからもう少しペースを落としてもよかった気がします。

もちろん昭和61年という時代では、油絵の情報を入手できるだけで十分価値ある放送だったと思われます。なので情報量を優先する必要があったのかもしれません。テレビや書籍のように情報量の提供に限界があるメディアでは、「情報量を優先してテキストをつくるのか?」それとも「初心者が実行可能なレベルで情報を抑えるのか?」で制作側は悩まれたと思います。

最近のNHK趣味講座

NHKでは適期的に油絵入門の入門講座を放送しているようで、その後も様々な講師によって放送され続けています。最近では『趣味Do楽 城戸真亜子の油絵って楽しい!』 という番組が放送されていたようです。

テキストのサンプルを見ると初心者が手を動かして学習しやすいテキストになっているようです。目次を確認すると27年前よりもトピックの数がしぼられ、制作しやすい内容になっているようです。この講座ならば、まったく絵を描いたことがない人でも楽しんでやりとげられたのではないでしょうか?