名門美術大学アート・センター・カレッジ・オブ・デザインで教授をしていたスコット・ロバートソンさんによる透視図法のテキストとレンダリング法のテキストが日本語訳されて出版されました。
今までの透視図法のテキストの弱点
透視図法は決まりきった手順で描く技法なので、今まで出版されたテキストはどれも似たような内容になりがちでした。たくさんの線が交差するので複雑な形を解説すつには難しく、サンプルとして複雑な形をしたオブジェクトを掲載したとしても、描き方の詳細は抜け落ちてしまうのが普通でした。
なので今までのテキストでは基礎は簡単に理解できるのですが、複雑な形へ応用しようとするとなかなか難しく感じることが多かったと思います。
スコット・ロバートソンさんの透視図法とレンダリング法のテキスト
スコット・ロバートソンさんのテキストでは基礎的なテクニックをしっかりとおさえた上で、少しずつ複雑な形にチャレンジしていきます。なので基礎的なテクニックを組み合わせ、どのように複雑な形を作りだせるのかよく理解できるようになります。
また動画による解説も公開されているので複雑になりがちな解説も理解しやすく、車や飛行機のような複雑な形であっても各ステップを理解しながら完成させることができます。
透視図法のテキスト
レンダリング法のテキスト
対象となる読者
このテキストでは透視図法を学びたい初心者からカーデザイン、インダストリアルデザイン、または映画やゲームなどのコンセプトアートなどを学びたい人の入門書として大変役に立つと思われます。建築パースを学びたい人がこのテキストを使って学習しても問題ないのですが、普通の建築パースならばここまで複雑な形を描けるようになる必要は無いかもしれません。
書籍と動画で学習
透視図法は補助線をたくさん引いてから最終的な線を導き出すので、作業手順を理解することがなかなか難しいです。また作業プロセスが進むと補助線だらけになり、どの補助線が何の役割をしていたのか混乱することがよくあります。しかしこの書籍は丁寧な解説と豊富な図が掲載されている上にインターネットにアップされている動画を見ることで複雑な手順を簡単に理解することができます。
またスコット・ロバートソンさんが以前発売したThe Gnomon WorkshopのDVDでは、部分的に調べたいことがあった場合、巻き戻しと早送りをして探す必要があったので大変でした。今回発売された書籍では掲載されているテクニックに対応して動画が作られているので参照しやすくなっています。
基礎的な立体から複雑な立体まで描けるようになる
透視図法とレンダリング法のどちらのテキストも基礎的な立体から学習をスタートし、徐々に複雑な立体を学習する構成になっています。なので最初に基礎的なテクニックを学び、それらのテクニックを組み合わせてどのような形にでも対応できるようになります。最終的には飛行機や自動車といった複雑な立体にチャレンジすることになりますが、テクニックの組み合わせ方を理解していれば問題なく制作することができるようになります。
描き方を理解したら練習あるのみ!
この書籍を読んで描き方を理解しても絵を描くスキルがアップするわけではありません(笑)。描き方を理解したら練習をする必要があります。スコット・ロバートソンさんの教えていたアート・センター・カレッジ・オブ・デザインでは教授陣の指導が良いだけでなく、徹底的に練習をさせるそうです。たしかアートセンターの卒業生である奥山清行さんがどこかのインタビューで「アートセンターは軍隊教育みたいだった」と言っていた記憶があります(笑)。アートセンターの学生を見習って真剣に練習しないといけませんね・・・頑張りましょう!
アート・センター・カレッジ・オブ・デザインについて
アート・センター・カレッジ・オブ・デザインはカーデザインの教育で世界的に有名ですが、映画業界やゲーム業界のコンセプト・アーティストとして働く人を多く卒業させています。『ブレードランナー』のデザインを担当したシド・ミードさんや『スター・ウォーズ』のデザインを担当したラルフ・マッカリーさんが有名です。
そこでアート・センターでは近年になってエンターテイメント・デザイン学科を設置しました。以前アート・センター・カレッジ・オブ・デザインのアドミッションズ・オフィスの人に話をきいたところカーデザインの学科とエンターテイメント・デザインの学科は人気なので入学するのは難しいと言ってましたから、このような書籍で基礎が学べるのはありがたいことです。
エンターテイメント・デザイン学科の授業
下記の書籍はスコット・ロバートソンさんがエンターテイメント・デザイン学科の授業をまとめた内容になっています。学生に出した課題と生徒たちの作品と解説などから授業の雰囲気が伝わってきます。特に「どのようにアイディアを作り、コンセプトアートとして作り上げあるのか」という点についてよく理解できます。アメリカの私立大学は学費が2千万円以上するのでおいそれと体験することはできませんから貴重な書籍です(笑)。
THE SKILLFUL HUNTSMAN / うでききの狩人
3人の学生がグリム童話の「うでききの狩人」をモチーフにコンセプトアートをつくるプロジェクトです。学生たちの作ったコンセプトアートと解説に対してスコット・ロバートソンさんがコメントを書いています。コンセプトアートとはどのようなモノなのかを知るのには良い本です。
エンターテインメントの未来/in the future…
エンターテイメント・デザイン学科の教授陣から出題されたさまざまなプロジェクトにたいする学生たちの作品が掲載されています。テクニックや制作方法だけでなく、学習に必要となるカリキュラムの作り方なども参考になります。